6−3 忙しいことを理由に有給休暇の取得を拒否された


質問  
 会社に年次有給休暇の取得を請求したら,「今は忙しい時期だから」という理由で拒否されました。どうしても休まなくてはならないのですが,どうすればよいのでしょうか。
  
回答  

ポイント



 会社は,一定の要件を満たした労働者には,年次有給休暇を与えなければなりません。

 

2 

 休暇を利用するための理由は,原則として問われることはありませんし,特別な事情がない限り,いつでも,自由に取得することができます。

年次有給休暇は,労働者が自由に利用できます。

 年次有給休暇をいつ取るか,また,それをどのように利用するかは,労働者の自由です。会社は,休暇の理由によって,休暇を与えたり与えなかったりすることはできません(白石営林署事件・最二小判昭48.3.2)。
 
ただし,例えば,一度に多数の労働者が同じ時期に休暇を取るなどすれば,事業の正常な運営を妨げることも考えられます。そこで,事業に支障が出るときに限り,会社は,年次有給休暇を他の日に振り替えることができます(これを「時季変更権」といいます)。
 そうは言っても,使用者が休暇取得日を一方的に指定できるということではありません。単にボールが労働者に投げ返されただけのことで,労働者が改めて休暇取得日を指定することになります。
 事業に支障があるときというのは,客観的にみて,そのときに休まれたら会社が正常に運営できないという具体的な事情があるときで,判例では,会社の規模,年次有給休暇を請求した人の職場での配置,その人の担当する作業の内容・性質,作業の繁閑,代わりの者を配置することの難易,同じ時季に休む人の人数等の様々な事情を総合的に考慮して,合理的に決定すべきであるとされています(東亜紡績事件・大阪地判昭33.4.10)。
 また,判例によれば,労働者が指定した時季に休暇が取れるように状況に応じた配慮をする義務が使用者にはあるとされています(弘前電報電話局事件・最二小判昭62.7.10ほか)
 したがって,ただ忙しいからというだけで,年次有給休暇の取得を拒否することはできません。

こんな対応を!

 年次有給休暇は,労働基準法により労働者の権利として守られています。使用者には,既に述べたように時季変更権が認められてはいますが,「できるだけ労働者が指定した時季に休暇を取れるよう状況に応じた配慮をすること」を使用者は求められており(前掲弘前電報電話局事件・最二小判),実際には,変更権を行使できるケースは限定されています。この点を踏まえた上で,使用者とよく話し合い,理解を求めましょう。
 
話し合っても理解が得られない場合には,労働相談機関に相談してください。

更に詳しく

<年次有給休暇とは> 

 使用者は,6か月以上継続して勤務し,全労働日の8割以上出勤した労働者には,少なくとも10日間の有給休暇を与えなければなりません。年次有給休暇を取る権利は,法律上当然に生じるもので,労働者の請求や使用者の承諾によって生じるものではありません(前掲白石営林署事件・最二小判)。
 年次有給休暇を付与しなければならない日数は,勤務年数に応じて,最高20日まで加算されます。勤務年数ごとの
付与日数は,別表のとおりです。労働基準法は,あくまでも最低の基準を定めたものですから,これを上回る日数の年次有給休暇を与えることは,もちろん構いません。
 また,年次有給休暇を取得しても,その間の賃金は支払われます(有給休暇といわれる所以です)。

<不利益取扱いの禁止>
 
使用者が,年次有給休暇の取得を理由に,労働者に対して不利益な取扱いをすることは,労働基準法によって禁止されています。
 ここでいう「不利益な取扱い」には,精皆勤手当や賞与の減額,欠勤扱いとすることによる不利な人事考課などのほか,年休の取得を抑制するようなすべての不利益な取扱いが含まれます(沼津交通事件・最二小判平5.6.25など参照)。
 なお,この事件では,タクシー運転手につき,年休取得日を皆勤手当の算定基礎である出勤日から除外する措置が問題となったのですが,月給に占める皆勤手当の割合が最大でも1.85%にとどまることなどから,年休取得を事実上抑止する力は大きなものではないとして,望ましくはないが,無効とまではいえないと判示されています。)

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